Smiley face
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準備を終え、給食を前に笑顔を見せる生徒たち=2024年12月17日午後、福岡県太宰府市高雄2丁目、太田悠斗撮影
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 全国の公立小・中学校で、牛乳のみを提供する「ミルク給食」が姿を消しつつある。文部科学省によると、提供校はこの10年で約5分の1になり、九州・山口でも半分以下に。ミルク給食の現状を探った。

■40年以上続いた学校、完全給食に

 「いただきます」

 麦ごはん、サケの塩焼き、汁物……。午後1時過ぎ、給食の献立が各生徒に行き渡ると、教室に元気な声が響いた。福岡県太宰府市立太宰府東中学校の昨年12月の光景。だが、1年前とは大きく様変わりした。

 それまで市では、市立中の全4校で40年間以上にわたってミルク給食を実施してきた。調理した給食を提供すると配膳に時間がかかり、予算確保も難しく、弁当を持参するか、事前に注文して学校で受け取る方式を採っていた。

 しかし、保護者の強い要望を受けるなどし、昨年1月から主食とおかず、牛乳がある「完全給食」導入に踏み切った。準備の時間短縮のために各校では教職員が効率的な配膳の流れを練習する時間を取った。ふるさと納税による歳入増も、決断を後押ししたという。

 同校2年の田中雷人(らいと)さん(14)は「栄養士さんが作ってくれるから良い」。献立を考える管理栄養士の中西茜(あかね)さん(36)によると、体の成長に応じて必要な栄養量の基準に合わせ、十分にカルシウムや鉄分などを取れるよう工夫しているという。

 安達親作教頭は、「スムーズに移行できた。今ではもうみんな慣れている」と話した。

■九州・山口で全国の3分の1

 そもそもミルク給食は、いつから始まったのか。文科省によると、導入されたのは、第2次世界大戦後の1947年ごろ。食料不足による子どもの栄養失調を防ぐため、米国からの支援物資だった「脱脂粉乳」を配給したことが始まりだという。その後、58年には国産牛乳が提供されるようになった。

 学校給食歴史館(埼玉県)の中島勝男館長(65)によると、多くの自治体でミルク給食が実施されたが、50年ごろから東京など首都圏を中心に完全給食が広がっていったという。中島さんは「人口が多く食料不足の続いた都市部では、『給食で栄養を』と考える保護者が強く要望したからではないか」と推察する。

 中島さんによると、70年代後半には完全給食が主流になった。文科省の調査では、ミルク給食を採用する公立小中学校は2013年度の645校(全体の約2.1%)から、23年度には122校(約0.4%)に縮小。ただ、九州・山口の8県でみると109校から41校になったものの、23年度時点で全体の3分の1を占める。県別にみると、福岡、佐賀、長崎、大分の各県で実施が続く。

 中島さんは九州で根強い理由…

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